シニア世代の矯正とは?(60歳以上)

SNS等では大人の矯正等の書き込みが多く見受けられ、もはや30代40代の矯正治療は当たり前の時代となっています。さらにシニア世代の矯正治療も注目されつつあります。

そんなシニア世代の矯正治療ですが、何歳まで出来るのでしょうか?

滋賀県のほりい矯正歯科クリニック堀井和宏先生に、シニア世代の矯正事情を実際の症例と併せてお話を伺いました。

シニア世代の矯正は何歳まで?

矯正治療は、歯がある限り歯の根が残っていればたとえ差し歯であっても、年齢に関係なく歯列矯正治療は可能です。

実際、70代、80代の女性を治療したことがあります。

ただ大人の場合、歯周病や喪失歯があることが多いので治療に一部制約が生じることはあります

さまざまな条件が重なり子どものころに治療が出来ず、子育てが一段落して自分の時間が持てるようになるのをきっかけに治療したい人が増えてきているようです。

シニア矯正治療の目的は?

矯正治療の大きな目的は不正咬合を整え、美しい歯並び、正常な咬み合わせを作っていくことで、自分の歯でよく噛めるようにすること、ひいては健康な生活を送れるようにすることです。

大人の矯正治療を希望される方は、これに加え、口元を整え美しくなりたいと来院される方が多いです。

つまり、咬み合わせという機能的な面で治療を希望される場合や、見た目という審美的な面で治療を希望される場合、複合的な場合などがあると思います。

シニア矯正のメリットは?

キレイな歯並びになることで、ブラッシングがしやすくなり虫歯や歯周病になりにくくなります。自分の歯でよく噛むことは健康寿命を延ばす効果があります。

また、治療前と治療終了後の写真を比較すると、全く別人のように上手に笑うようになられます。人前で抵抗なく笑えるようになると自己肯定感が高まり、コミュニティの場が広がり豊かな社会生活を送ることが出来ます。

さらに、よく噛むことやよく笑うことは、免疫力を向上させると言われています。

歯には顔、特に口元の形を保持する役割もありますから、歯の位置、特に前歯の位置や傾きを変えることで口元の形は変わります。歯を動かして良いかみ合わせや理想的な前歯の角度を作ってゆくことで、歯並びだけでなく口元の形を整える効果も期待できるでしょう。

矯正治療中の見た目が気になる方には?

矯正中の見た目が気になる!と歯列矯正治療に二の足を踏んでいる人も多いです。

「仕事上どうしても歯の表面に矯正装置をつけられない」とか「全く見えないようにしてほしい」と大人ならではの要望もあります。

そのようケースには、歯の裏側に装着する矯正装置や、透明なマウスピース型の矯正装置をつけて歯を動かしていきます。

歯の裏側に矯正用のマルチブラケット装置を装着する方法は、表側とほぼ同じ治療が可能になります。治療期間も裏側からの方が早く終了するケースも多いです。

また、透明マウスピースの装置(インビザライン矯正など)は取り外しが可能で、ブラッシングが行いやすく、金属アレルギーのある人も治療可能です。

シニア矯正の特徴は?

シニア歯列矯正は、子どものようにアゴの成長を期待できません。骨の成長がないことを考えると、現状のアゴの上に並んでいる歯を動かしていくことになります。

また、治療した歯が多い、神経がない歯が多いなど、正確な治療方針を立てなければならず、矯正歯科の専門的な知識や豊かな経験が必要となります。

シニア矯正治療中の注意点は?

歯列矯正治療は審美歯科治療や美容整形治療ではありません。

数回で治療が終了することはなく、短いケースで数カ月、場合によっては2年半程度、矯正装置を装着して治療を受けていただくことになります。

抜歯が必要になるケースもあります。

骨格の状態や叢生、歯の角度などの条件によっては、口元の変化の度合いが小さい方もいらっしゃいます。

私たち専門医は、矯正用の特殊なレントゲン写真や歯列模型、口元の状態を詳しく分析・判断してから、治療に入るようにしています。

実際のシニア矯正治療例:初診時67歳女性

初診時Ⓒほりい矯正歯科クリニック
矯正治療後Ⓒほりい矯正歯科クリニック

主訴:出っ歯が気になりスマイルが出来ない

診断名:上顎前突

初診時年齢:67歳4か月

装置名:マルチブラケット装置

抜歯or非抜歯:抜歯ケース、抜歯個所はダミー装着し、歯の動きに合わせ削りながら治療

治療期間:2年10カ月

費用:900,000円程度

リスク: 歯の移動を行う際の痛みが生ずる場合がある。

ブラッシングが十分行わなかった場合に虫歯ができることがある。

歯の移動を行うと極めて希に根の吸収が起こることがある。

矯正用ゴムを指示通り使用しないと計画している歯の動きが得られないことがある。

装置が粘膜を刺激することで口内炎が起こることがある。

歯の裏側の装置の場合、装着後数日は発音障害が出ることがある。

記事監修

ほりい矯正歯科クリニック|

堀井和宏先生

日本矯正歯科学会 臨床指導医(旧 専門医)

滋賀県大津市粟津町4-7 ☎077-533-3741

まとめ

シニアの矯正事情について、ほりい矯正歯科クリニックの堀井和宏先生に実際の症例を提示していきながら、お話を伺いました。

”有意義に歳をとるには、長くなった人生において健康で、社会に参加し、安全に生活する最適な機会が常に無ければならない”というビジョンを実現するためのプロセスをWHO(世界保健機構)は、「アクティブ・エイジング」と呼んでいます。

この「アクティブ・エイジング」を増進する決定要因の一つとして『口腔衛生』の重要性がうたわれています。

矯正治療の機能的なメリットとして、不正咬合を整え、美しい歯並び、正常な咬み合わせを作り、自分の歯でよく噛めるようになることです。これにより健康的な生活が送れるようになり、生活の質も向上されることが予想されます。

また、矯正治療の審美的なメリットとして、口元を整えることで見た目が美しくなることです。これによって、自己肯定感が高まり社会活動に積極的に参加することで豊かな生活を送ることが出来ます。

シニア世代の矯正治療は、まさにアクティブ・エイジングするために必要だと思います

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